
僕らのファミリーキャンプ物語 vol.8 『ミホの勘違い』
ファミリーキャンプにも慣れてきた冬、我が家は初めての冬キャンプに挑戦しました。
やわらかい粉雪が舞うキャンプ場に到着すると、澄んだ空気が家族の頬をやさしく撫でます。
お父さんの目は輝き、日頃のストレスを忘れ、家族をもてなす喜びに満ちています。
「さあ、みんな!テントを立てるぞ!」
お父さんの声が雪原に響きます。
お母さんはテント設営を手伝い、タカシは焚き火の準備に取り掛かります。
一方、ミホは雪の感触に歓声を上げ、雪を追いかけて走り回っています。
夕暮れ時、少しずつ冷え込む中、お父さんは得意のもつ鍋の準備を始めました。
「よし、もうすぐ出来上がるぞ。ミホ、楽しみにしていてな」
と声をかけると、ミホは無邪気な笑顔で応えます。
「うん!お魚楽しみ!」
お父さんは一瞬戸惑いましたが、そのまま調理を続けました。
鍋から立ち上る湯気と香りに誘われ、ミホが近づいてきます。
「お魚の鍋、いい匂いだね!」
お父さんは笑いを堪えながら答えます。
「そうだな、もつは美味しいからな」
しかし、ミホの返事に驚きます。
「うん、前におじいちゃんと釣ったときもすごくおいしかった!」
もはや笑いを抑えきれず、お父さんは優しく説明します。
「ミホ、それは違うよ。もつは魚じゃないんだ」
ミホは目を丸くして尋ねます。
「え、もつってお魚じゃないの?」
この会話を聞いていたお母さんとタカシも、思わず笑い出してしまいます。
お母さんが優しく教えます。
「ミホ、おじいちゃんと釣ったのはマスっていうお魚よ。もつはお肉の一部なのよ」
恥ずかしそうに頬を赤らめながら、ミホは笑顔で
「そうだったんだ!」と驚きの声を上げました。
お父さんも微笑みながら
「今度おじいちゃんに会ったら、この話をしてあげような」と言いました。
家族全員でこの可愛らしい勘違いを笑いながら、湯気の立つもつ鍋を囲みます。
温かい鍋と家族の笑顔が、冬の寒さを吹き飛ばしていきます。
食事の後、家族は焚き火を囲んで温かい飲み物を楽しみました。
タカシは焚き火でマシュマロを焼き、妹のミホにそっと手渡します。
「お兄ちゃん、ありがとう!」ミホの嬉しそうな顔に、家族の絆の温かさが感じられます。
「お父さん、キャンプって本当に楽しいね」とタカシが言うと、お父さんは満面の笑みで答えます。
「そうだろう?自然の中で過ごすとリフレッシュできるし、何より家族みんなで一緒に楽しむことが大切なんだ」
夜が更けると、家族はテントの中でぬくぬくと過ごしました。
寝袋に包まれながら、お母さんが「明日は雪遊びもしようね」と言うと、子供たちは興奮して
「やったー!」と歓声を上げました。
翌朝、一晩中降り続いた雪でキャンプ場は幻想的な景色に変わっていました。
家族は雪遊びを楽しみ、ミホは今度こそマスともつの違いをしっかりと理解し、その話題で家族全員が笑いながら過ごしました。
お父さんは澄んだ冬の空を見上げ、心の中でつぶやきます。
「やっぱり家族とのキャンプは最高だな」
この冬キャンプは、ミホの可愛らしい勘違いと共に、家族の心に温かい思い出として刻まれました。
雪の中での団欒、笑顔、そして家族の絆。
これらすべてが、高橋家の宝物となったのです。