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20240727
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僕らのファミリーキャンプ物語 vo.12 『お父さんの失敗』

梅雨明けの爽やかな風が吹く土曜日の朝、我が家は久しぶりのキャンプに胸を躍らせていました。

特にお父さんの目は輝いていました。

日頃の仕事のストレスから解放され、家族と共に過ごせる貴重な時間。

その期待感が、少し度を越した行動へとつながってしまうとは、誰も予想していませんでした。

キャンプ場に到着すると、家族それぞれが役割分担。

お母さんは手際よくテーブルとチェアを並べ、タカシとミホは興奮気味に周辺の探検へ。

お父さんはテント設営に取り掛かりますが、その手にはすでにビールの缶が。

「今日は思いっきり楽しむぞ!」

という宣言とともに、お父さんは一気にビールを飲み干しました。

その姿に、お母さんの眉間にわずかなしわが寄ります。

昼食の準備が始まると、キャンプ場に活気が溢れます。

お父さんの得意のバーベキューから立ち上る香ばしい匂いと、ジュージューという音が食欲をそそります。

「おい、タカシ、ミホ、見てくれよ!お父さんのバーベキューは最高だぞ!」

得意げに宣言するお父さんの手には、またもやビールの缶が。

昼食は大成功。

家族全員の顔に満足げな笑みが浮かびます。

しかし、お父さんのビールの消費ペースは止まる気配がありません。

心配そうに「お父さん、飲みすぎないようにね」

と声をかけるお母さん。

だが、「大丈夫、大丈夫」と軽く受け流すお父さん。

その言葉とは裏腹に、酔いの程は深まっていきました。

午後になると、お父さんの様子は一変。

他のキャンプ客とも大声で盛り上がり、笑い声が響き渡ります。

一見楽しそうですが、家族の表情には不安の影が。

そして、夕暮れ時。

予期せぬ事態が起こりました。

ふらつきながらキャンプサイトに戻ってきたお父さんが、まだ熱いバーベキューグリルを倒してしまったのです。

幸い大事には至りませんでしたが、お母さんの表情は厳しさを増しました。

「お父さん!何やってるのよ!」

怒りの込もった声にお父さんは、「あ、すまん、ちょっと酔っ払っちゃって…」

と言い訳するのが精一杯。

タカシとミホは、両親のやり取りを心配そうに見守るばかり。

お父さんは何とか場を和ませようと冗談を言いますが、逆効果でお母さんの怒りを増幅させてしまいます。

「お父さん、こんなことしてたら、せっかくのキャンプが台無しじゃない!」

お母さんのため息が、夕暮れの空気に溶け込みます。

その夜、反省したお父さんは皿洗いを買って出ましたが、酔いが抜けきらず、皿を割ってしまいます。

「もう、いい加減にして!」

というお母さんの声に、お父さんはしょんぼりと椅子に座り込みました。

「ごめん、今日は本当にダメだったな…」

心からの反省の弁に、ミホがそっと寄り添います。

「お父さん、大丈夫だよ。次はちゃんとしようね」

タカシも「お父さん、またバーベキューやってね。でも、次はお酒控えめにね」

と、優しく声をかけました。

翌朝、二日酔いの頭を抱えながら目覚めたお父さん。

すでに朝食の準備をしているお母さんに近づき、真摯な表情で謝罪します。

「本当にごめん。もう二度とこんなことしないから」

お母さんは小さく微笑み、「わかったわ。でも、本当に気をつけてね」と応えました。

その日、我が家は再び笑顔を取り戻し、穏やかなキャンプの時間を過ごしました。

帰路の車中、お父さんが「次はもっといいキャンプにしような!」

と意気込むと、お母さんも

「そうね、次こそはね」と笑顔で答えました。

この忘れられないキャンプは、我が家にとって大切な教訓となりました。

こうして、波乱に満ちたキャンプは、我が家の新たな出発点となりました。

失敗を乗り越え、より強くなった家族の絆。

次のキャンプへの期待を胸に、我が家は日々の生活に戻っていきました。

そして、この経験は、お父さんの仕事へのアプローチや、家族との向き合い方にも良い影響を与えていったのです。

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